みっちょんと嫁

目つきの悪い看護師が午後診察のため出勤してくると
点滴室の寝台に寝そべってるトド失敬 みっちょんに遭遇する

「みちょん どうしたんですか?」
「あぁ?眩暈眩暈・・くらくらして気持ち悪いんよ」
「あ~それは大変だね 今もまだ続くんですか?」
「もう あかん きっと もうじき逝ってしまうんや・・」


おぉ みっちょん弱気である
この御大 普段は
「不遜」と書いて「みっちょん」と読む
・・と言うくらいふてぶてしい いや お元気な人なのだ

のどかな午後のクリニック 
弱気な老人みっちょんを慰めていると
そこに ばた ばた ばた ばた とえらい勢いで駆け込んでくる物体
「お義母さん!お腹空いたでしょっ ご飯買ってきたよっ」
みっちょんちの嫁さんの登場である
ご苦労様 できた嫁だよ
みっちょんちの嫁ってだけで既に尊敬に値するんじゃないか?
そのいろんな意味ですごいこの嫁さん
えらい早口 えらい素早い動作でスーパーの袋からがさがさと
なにやら取り出した


え? おにぎり・・  ?
さっき みっちょん 気持ち悪いって言ってなかったか?
それはちょっと~っと看護師が口を開きかけた瞬間


みっちょん 嫁の手からおにぎりを奪い取ると猛然と貪りだしたのだ
もしゃもしゃもしゃもしゃ・・・
咀嚼する音が点滴室を占めている
もしゃもしゃもしゃもしゃ・・・
あんた気持ち悪くなかったのかい?
呆然とする看護師


「あんたも食べるかい?」
「いや 結構っす」
「あ そう・・」


突然 みっちょんの動きが止まった
喉に詰まらせたか?

ぶわぁっくしょん

えらいくしゃみとともに飛び散る米つぶ 米つぶ 米つぶ・・
うわぁ・・最悪・・
茫然自失の看護師・・
しっかし その脇を疾風が駆けた

嫁さんである

「すいませんすいませんすいませんお義母さんだめでしょっあぁごめんなさい看護師さんすぐ片付けますからあぁお義母さん動いちゃだめよっすいませんごめんなさいごめんなさい」

あまりの早口で半分聞き取れないが 嫁さんハイスピードで床を掃除し出したのである
看護師も一応「あ 良いですよ こちらで掃除しますから・・」
と言ってみたが言ってる間にも床の米粒はきれいに回収されていく
・・・・・ま いいか・・


嫁が床を片付けてる間にみっちょんもすっかりおにぎりを食べてしまっていた

 
「さて 帰るかぁ 看護師さん これ抜いて?」


え? さっき気持ち悪くて死んでしまうと言ったのは誰や?
帰るの? あ・・そう・・


先生の許可をもらい 点滴を抜針したみっちょんは
もったもった と帰っていった

「また 明日 来るからの」
いや いいです 
おうちで休んでね


・・とは言えず 二人を見送る看護師だった


坂の上のクリニックの床は今日もキレイ・・である

みっちょん

みっちょん(72)の靴ん中には エビ煎餅が入っている


点滴をしようとみっちょんが寝そべってる寝台に近寄って 気が付いた

結構大きい つか まるまる一枚 入ってた

「・・・えびせん・・入ってるよ?・・・」おそるおそる聞いてみる

「あぁ? あー・・・気がつかんかったよ・・何か歩きにくいと思った」



そういう問題なのか?
みっちょん  ナイスだ・・




点滴を終え みっちょんは 帰っていった
靴んなかにエビ煎餅入れたまま・・




Q、なんでエビ煎餅を取ってあげなかったんですか?
A、靴に同化してて・・・・触る勇気がありませんでした←弱虫



みっちょん 【足下注意】  だよぉ~
後ろ姿に声かけてみる

もちろん  みっちょんには    聞こえない

みとさん

うちの職場にくる患者さんで
みとさん という70後半の奥さんがいる

みとさんは 喋らない
ホントに喋らない
みとさんは毎日点滴とリハビリにやってくるのだが
看護師や看護助手さんを呼ぶときは
おもむろに ぱんぱんと手を高らかに二つ叩きなさる
それまで 賑やかしく笑いさざめいていたリハビリの室内は一瞬


シーン・・・・

一拍おいて ざわざわ・・・・いつものリハ室に戻る
誰も何も言わない いつもの光景だから


そら そうだろう
どこのお姫さんだよ
どうやら みとさんはバスタオルを貸して欲しいらしい
鶴の足みたく細い指が ついっと
バスタオルを指さしているからだ
歩いて3歩なんだからさ 自分で取れよ・・ 言えない 言わない



みとさんは喋れないのでなく 喋らない
それを証拠に 診察室では切々と全身の関節の痛みを訴えるし
いつも診察についている何だか妙に怖い看護師にはちゃんと
「タオル取ってください」と言うのだ←奴に怒叱られた過去あり



お姫さんは本日の日程を終えると必ずトイレにお籠もりになる
一つしかない外来トイレ 
籠もったら 当然ドアの前には順番待ちの列ができる
みとさん 早く出てね
みんなの心の叫びはきこえてるかい?
そう 心の叫びは声に出しちゃいけません
※お年寄りは急かしてはいけません 転倒したら大変です



みとさんはトイレから出るとダーリンのお迎えの合図(クラクション1つ)とともにお帰りになる


トイレで何をしてるかって?
トイレの観葉植物の鉢の中を覗いてごらんなさいよ
いっつも入ってる
のど飴の包装紙3つ 飴食ってから うちに帰るようだ


みとさん 鉢の隣にゴミ箱ありますよ?
つか トイレで飲食はいかがなモンでしょう


事務のお姉さんがやんわり注意してみた  ・・玉砕 ←聞こえないらしい
時々自己都合で難聴になるようだ それは大変 お大事にね


みとさんは喋らない
それでも たまに機嫌がいいと帰り際 
こっそり「ありがとう」と呟いたりしてる
なんなら いつも 言ってくれ と 妙に怖い看護師が呟いてみる



みとさん 坂の上の小さいクリニックで【最強の女】だったりする

あきこさん

職場の常連さんで「あきこ」さんという人がいる
70才半ばの独居のご婦人だ
1km以上ある急な坂道を徒歩でよっこらよっこらとやってくる
足取りはしっかりしている いるのだ

坂の上の静かで小さなクリニック  
近所のお年寄りの集会所・・と呼ばれている
あきこさんはそこの常連だ

「あきこさ~ん」
診察室から彼女を呼ぶと
それまでしっかり歩いていた彼女が 突然・・よろめく
正しくは診察室前2mまではしっかり歩いてやってくるのだ
はかったかのように2m手前で きっちりよろめく
「あ~めまいが・・」よろり・・・
『さっきまですごいスピードで歩いていたやん』
看護婦は思っていても言わない なぜなら毎回のことだから・・

診察室でもあきこさんワールド全開である

「先生 眩暈が酷くて家から出られないんです」
『昨日アピタの火曜特売でみかけたよ あんたを』言うな看護婦

「え?運動?無理です ふらつくんですもの」
『ふらつく?すごいスピードでレジまで歩いてたやん』 ・・・。

散々診察室で喋ったあと 立ち上がる際には立ちくらみをかます
当然これも お約束である
「ああ~こわいっ」とっさに先生に支えられて 安心するあきこさん
・・・うそや・・・
何故 近くに立ってる看護婦にしがみつかんと
わざわざ不自然に体を捻ってまで先生に抱きつくよ・・あきこさん

診察室を出たあきこさんに囁いてみる意地悪看護婦
「昨日アピタで会ったよねえ あきこさん?」
一瞬青くなる・・・んで 赤くなる 顔
一生懸命言い訳しなくてもいいよ 別に
知ってるから  あきこさんは寂しいだけなのだ


春が過ぎて 夏になっても
毎週毎週 あきこさんは 坂道を自分の足で登ってくる
わっし わっし 歩いてくる


あきこさん その道はね 先生から 丸見えなの
先生は毎週 あきこさんの立派な歩きを眺めているのよ

・・・あきこさんには 教えられない・・・



プロフィール

かかろんさん

Author:かかろんさん
◎性別 中年のおばさん
◎性格 すばらしく雑


◎家族構成
★亭主
腹は黒いが 
あだ名は【住職】
マイペースな初老
毛根が枯渇している

★息子 
社会人
人はいいが、足が臭い
魔窟(汚部屋)に住む
空気読まないアスペ君

★娘 
春からA型作業所へ
食欲魔神な自閉症
前世はきっと肉食獣
勢いだけで生きている


      


「あなた悩み無いでしょ」
と言われた
んな訳 あるかい!

    

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